獣医師評論【コラム】
にほんまつ動物病院
二本松 昭宏先生
目指しているのは、「治して欲しいという気持ちに、治してあげたいという気持ちで応える獣医師」です。患者さんとの良い信頼関係を築くためには、しっかりした説明をしたうえで、飼い主さんがよく理解し、飼い主さんがご自分にとっての最良の選択をできるようお手伝いすることが大切だと思います。疑問に思ったことは率直に尋ね、よく理解・納得したうえで、治療をしてあげて下さい。
動物を飼う権利はあるか
自由主義社会が発達し、いろんな権利が叫ばれるようになっています。一昔前では想像もできなかったような種類の権利までが提唱されています。その中で、動物を飼うことに関してもいろいろな論議があるようです。
動物を飼う権利と言うことに関して言えば、動物虐待をする人間には飼う権利を与えないようにしようなど、禁止的な用いられ方をすることが多いようです。しかし、素朴な疑問として人間に動物を飼う権利などと言うものは存在するのでしょうか。
権利は人間が生み出した概念に過ぎません。それは本来、社会契約的なものとして、個人間でなされる約束事です。
「私は対価を払った、従ってサービスを受ける権利がある」、これは分かります。しかし、人間社会を超えたものに権利という言葉を当てはめ、それを自明の真実にしてしまうと言うことはおかしい事だと思います。
動物を含め生物は本来自然のものです。人間のものではありません。犬や猫は確かに人間社会の中に溶け込み、その中で暮らすようになっていますが、その所有権を人間が持つという根拠はどこにもありません。
人間には動物を飼うという権利はありません。権利や義務は人間同士でのみ通じる人の頭の中にある、ただの概念に過ぎません。
人間は動物を飼うという行動を自分の意志により選択しているだけです。そして自分の行動選択として動物飼育をする結果に対しては、個人は責任を負うことになります。
自分の飼育する動物をどうしようが自由だという論理は間違いです。そんな自由はそもそもないからです。動物を飼う以上、飼われる動物に対して、取り巻く社会に対して、個人は責任を負うことになります。
飼育動物が病気にならないよう、不必要な精神的苦痛を負わないよう、気をつける責任があります。他の人の迷惑にならないよう、不利益を与えないよう、気をつける責任があります。
責任を負うことはできないが動物は飼いたい、ではすまされません。動物を飼うと言うことはその動物の命をあずかると言うことです。責任を負えないという人は動物を飼ってはいけません。
しっかり面倒を見て、それだけの事をしてあげる、それだけの覚悟を持った人でなくては動物を飼う資格はないと思います。相手はおもちゃなどではなく、感情を持った生き物だからです。
動物を飼うことは市民としての当然の権利などではありません。命に対する責任を伴う行動の選択なのです。
命を軽々しく思う人は、決して動物を飼ってはいけないと思います。
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