獣医師評論【コラム】
きたのさと動物病院
今道 昭一先生
当院は皮膚科の専門ではありませんが、皮膚科は最も大切にしている診療の1つです。かゆみ、皮膚の発赤など皮膚のトラブルに対してしっかりと診断と治療をしています。皮膚疾患を解決するには時間と労力を必要としますが、あきらめずに治療を継続すればきっと改善すると信じて私達は診療にあたっています。
皮膚炎を繰り返す
抗生物質を飲むと症状は治まるけど中止すると再び症状が出る、あるいはステロイドで症状は消えるけど、止めると再び現れる...。このようにお薬を飲んでいると症状は治まるけど、お薬を止めると再び発症するという皮膚炎は頻繁すぎるほどあります。
今回は”皮膚炎を繰り返す”というテーマについてお話しようと思いますが、わかりやすくて、しかもよくある事例ということでアトピー性皮膚炎に見られるケースを例にとってお話を進めていこうと思います。
皆様は再発と悪化の違いを気にしたことがありますか? たとえば、お薬で治まった症状が投薬を止めてから1ヶ月以内に発症した場合、これは ”完治しきっていない皮膚病が再び悪化したもの” と私は判断しています。他方で、1度治まった症状が2ヶ月くらいたってから、再び出現したという場合は ”再発した” と考えています(もちろん例外はあります)。
たとえば、アトピー性皮膚炎のワンちゃんで抗生物質を飲むと症状は消えるけど中止すると症状が再び現れるというケースを考えて見ましょう。このようなケースはアトピー性皮膚炎に細菌感染による皮膚炎(膿皮症といいます)を合併していると考えられます。
このワンちゃんが抗生物質の投薬を終了して1ヶ月以内に再び膿皮症を発症したのなら、”完治していない膿皮症が再び悪化した” と考える方がよいのかもしれません。このときはより長期間あるいはより強力な抗生物質で治療する必要があります。
しかし、抗生物質を中止してから2ヶ月たってから症状が再燃したというのであれば、先とは治療方針が違ってきます。この場合は ”一度完治した膿皮症が再発した” と考えて、もう一度同じ抗生物質で症状を完全に消しきってしまった後、引き続き再発の原因になっているアトピー性皮膚炎の治療に取り組む必要があります。
このお話から理解して頂きたいことは、皮膚病が悪化したのか、あるいは再発したのかという区別は非常に重要で、この判断ミスはその後の診断や治療にとって致命的になり得るいうことです。
よほど末期的な皮膚炎を呈していない限り、一般的にアトピー性皮膚炎に合併した細菌感染は治ります。膿皮症が治らない原因はアトピー性皮膚炎や膿皮症以外にも合併症や併発症があるのかもしれないし、単に悪化したものなのか、あるいは再発したものかを誤って判断しているだけかもしれません。完治するはずの皮膚病が完治しきっていないときは、とにかく確実な診断をして徹底的に完治させることが先決です。
アトピー性皮膚炎のワンちゃんで ”ステロイドで症状は消えるけど、止めると再び症状が現れる” というケースはここでお話した悪化や再発とは違った解釈が必要です。また、このような機会がありましたらお話させて下さい。
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