あなたの街の動物病院
Vol.1 千葉県君津市 南子安動物病院
100%オープンなペットの医療機関をめざす
一見、人間の病院かと見まちがう南子安動物病院の外観
──JR君津駅からクルマで走ること約10分。広い街道沿いに南子安動物病院はあります。新築の白亜の建物は、一見するとまるで人間の病院のよう。救急車が間違って乗りつけてしまいそうな印象です。 佐藤元也先生はこの病院の二代目の若先生ですが、今のところ「生活すべてが獣医師」という熱血漢。文字どおり24時間年中無休の獣医師を実践しています。
大学を出てからすぐに父の病院を手伝いはじめたのですが、やはり広く社会を見た方がいいということで、ここに籍を置きながら関東~中部近県の病院をあちこち渡り歩きました。そこで感じたのは、動物病院というのはやり方も技術力もさまざまだということ。中には『こんなやり方はちょっと…』と思うところもあって、半日で辞めたこともありました。
──いろんな動物病院を見たことで、自分の病院を客観的に見つめ直すこともでき、「こんな医療機関が飼い主には求められている」というイメージも固まったとか。それを形にしたのが、今の南子安動物病院だそうです。
佐藤先生に新築したばかりの院内を見せてもらいました。
すべてがガラス張りの院内、手術の様子も見える
──玄関を入ると大きな吹き抜けのあるホール。ここが総合受付になっていて、左手にトリミング室、右手には2つの診察室、その奥に手術室やICUがあります。驚くのはここがすべてガラス張りであること。何がどこにあって、いまどんな治療が行われているか、一目でわかるようになっています。
自分にも設備にも惜しみない「投資」を
近隣の動物病院が使用できる動物高度診断ラボとCT
──さらに特筆すべきは、トリミング室に続く建物左奥にCT検査室があること!なんとここは近隣の動物病院が共同で使うことのできる動物高度診断ラボ(動物高度医療CTセンター)を兼ねているのだとか。
CTはまだ入れたばかりでそれほど使われていませんが、たとえば猫の頭蓋骨の骨折などでもじつに鮮明に骨折箇所や形状がわかる。どことどこにヒビがあって、どの程度の損傷であるかとかが瞬時にわかる。通常のレントゲンではここまでの精度は期待できません。この正確さは、これからの期待される動物の高度医療の大きな助けになると思います。
──ここまではわかるけどここから先はわからない、わからないから手の施しようがないというのは嫌なんです、と佐藤先生。このあたりではまだ脳や頭頚部に腫瘍が見つかっても、じゃあ大学病院で放射線治療をとなると「そこまではちょっと…」と言われてしまうケースが多いとのことでしたが、今はそれほどでなくても「できるだけのことをしてやりたい」と高度医療を望む飼い主は確実に増えてくるはず。そうした時に「できません」ではなく、一歩先に踏み出せるような体制をつくっておきたいということです。 南子安動物病院にはCTの他にも、カラードップラー超音波診断装置、高出力半導体レーザー手術装置、電子内視鏡、超音波乳化吸引装置などの最新医療機器が備えられていました。
かなり思いきって高性能の眼科検査機や歯科治療機も導入しました。眼の方は地元の人間の大学病院の眼科の臨床研究会などに加えてもらって勉強し、豚や牛の目をと殺場からもらってきて手術の練習台にしました。今では白内障のワンちゃんの手術なども恒常的に請け負ってます。都心とかでは片目30万円と言われますが、うちでは15万ぐらいでやっているので東京方面からアクアラインを使って来られる方も増えています。歯の方は、医療機器メーカーの講習会などに出て、専門書と首っ引きで勉強しました。こちらは需要はまだまだですが、私自身はいつでも臨戦態勢のつもりです。
セミナー室、中学生を集めて動物の勉強会が開かれていた
──さらに佐藤先生は、難しいとされる皮膚病についても独学で勉強を重ね、自分の「好きな分野」と言えるところまできたと自信を覗かせます。「うちは私と父と代診の先生だけなのでなんでもやらなきゃならないんですよ」と先生は笑いますが、その熱意には頭が下がります。
設備投資とそれを使いこなすための自分への投資。先生が24時間無休の獣医師を名乗るのも、そうした医療への探求心と熱意があってこそということでしょう。先生は現在、病院内にある仮の宿泊施設に寝泊まりし、夜間の救急医療に対応しているとか。それを知って、遠く東京・横浜方面からペットを連れてくる飼い主もいるそうです。
傷ついた野生動物の治療にも熱意
治療中のペットと一緒に寝泊まりすることができる部屋
──そんな時間の合間を縫って、南子安動物病院には交通事故に遭った野生のシカやサルなどがかつぎこまれてきます。もちろん、そうした野生動物には飼い主がいませんから、かれらの治療費は病院持ち。ですがこのあたりでシカの交通事故となると、警察がパトカーで運んでくるのはここなのだそうです。
先日なんか目に釣り針が刺さった白鳥がいるとの通報があって助けに行ってきました。だけど池の真ん中にいるのでつかまえられない。岸に寄ってくるまでじっと待ってつつかれながらようやく捕獲し治療しました。また女嫌いのメスのサルを治療した時などは、彼女が逃げだしてうちの女性獣看護士たちを追いまわし大騒ぎになりました。それでも、野生動物を診るのはじつに楽しい。ふだんは絶対見られない行動や表情が観察できるじゃないですか。そうした経験は、どんなペットを連れてこられても驚かないという自信となって、ふだんの診療に生かされていきますから
──高度医療とハートフルな医療、その両面を併せ持った南子安動物病院の医療姿勢は、これからの動物病院のあるべき方向性をズバリ示しているといえそうです。
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