井上 平太 先生からの回答
手術を受ける事に抵抗がある、あるいは出来るだけ小さな範囲で摘出手術を受けたいと言うことであれば、術前に細胞診などの病理検査を行うことをお勧めいたします。
この結果を踏まえて、悪性度が高ければ片側全摘出を考え、中等度であれば第3から第5乳腺の摘出を考え、良性であれば様子を見るあるいは第4乳腺のみの摘出を考えると言う方法もございます。今回の場合には当てはまらないと思いますが、非常に悪性度の高い炎症性乳腺癌の場合には、あえて手術をお勧めしないことが多いです。
しかし、乳腺腫瘍はたとえ良性でも基本的には年齢とともに大きくなっていきます。若いうちにしっかりと手術をしておくという考え方もございますので、それぞれの利点欠点をよく相談されたほうが良いと思います。リスクに関しては、個々の患者の状態によりますので、血液などの検査データーなしには、ここでは論じられません。
次に子宮卵巣摘出を行うかどうかに関してです。乳腺腫瘍の再発率に関しては、この年齢になってからですと、抑止効果はございません。初回発生率を抑えるデーターもございません。しかし、女性ホルモンに依存するタイプの乳腺腫瘍細胞の場合には若干成長率を抑えると言っている文献はございます。しかし今は、関係なしと言う立場の考え方が優勢を占めております。
ですが、ここで全く別の観点から考えます。この年齢からは、卵巣疾患や子宮疾患が発情を迎えるたびに増えてきます。特に、子宮蓄膿症に関しては、この年齢のメスの開腹手術の第一位の頻度と言っても過言ではございません。
また、乳腺腫瘍に罹患する犬では、開腹いたしますと何らかの卵巣子宮の異常が発見されることが多いような気が致します。
これらのことから、体力に余裕があれば避妊手術を同時に行うことも有意義であると考えられます。時間にして、手術時間が10分ほど長くなる程度の問題ですが、全身状態を考えて決めてください。
3番目に皮膚の癒合の問題ですが、縫合糸に対する反応が疑えます。前回と別のタイプの縫合糸を使用したほうが良いのかもしれません。この件に関しては診察しておりませんので、全くの推測です。
2006/11/20 01:26 参考になった! 0
投稿者 大学智恵子 さん からの返答
井上先生、お返事ありがとうございました。的確に悩みにお答え下さいましてとても感謝しております。これから愛犬のためにすべき方向性がはっきりしましたので、頂いたアドバイスを踏まえて早々に行動したいと思います。本当にありがとうございました。
2006/11/27 01:26
乳腺腫瘍
初めまして、是非アドバイスしていただきたいと思い質問させて頂きます。5歳のミニチュアダックスフントのメスです。2005年の12月に左側第4乳腺にしこりを見つけまして現在まで毎月の診察で経過を観察中です。大きさはヒート時期(1.5倍ほどの大きさ)を除き小豆大ほどの大きさを保っております。夏にレントゲンを撮り肺への転移は認められませんでした。
いろいろな事情が重なり、手術時期を延ばしてしまいましたが近々受けようと思っております。そこで手術で摘出する部分で迷っております。方法として片側の乳腺全摘と避妊手術を一緒にする方法、または発生した下側の乳腺だけを摘出する方法を提案して頂いたのです。飼い主としては今後の病気の発生のことも考え、何度も手術せずに済むよう一度の手術でどちらも摘出したほうがいいのかと思う傍ら、乳腺も子宮も摘出するのは術後、身体へのダメージが大きくつらいのだろうかと心配にもなります。
3年前に臍ヘルニアの疑いの症状で手術したのですが、治りが悪くいまだに臍の表面がぐちゅぐちゅしています(常にかさぶた状態です)。傷病みする体質だと思うのでそこも考慮にいれるべきなのでしょうか?