井上 平太 先生からの回答
一般的には麻酔が覚める前に飼い主のもとにお返しすることはないと思われます。
麻酔が覚醒するまでは気道確保あるいはチューブを抜去してあればマスクで酸素を吸入するか酸素テントで覚醒を待ちます。
覚醒が遅ければ血管は留置針などで確保していつでも薬剤を静脈注射できるように準備しておきます。
当院は当日は点滴で様子をみて翌日に元気や食欲があることを確認して退院の運びとなります。
たとえ即日退院の約束をした場合でも覚醒状態に不安があれば退院を延期します。
ただし麻酔には予測不能の事態は稀ではありますがございます。全く問題がないと確認されて退院しても急変することはあり得ます。35年間に全ての手術の中で2例ではありますが食欲があることが確認されたうえで退院し自宅で突然死を起こした例がございます。2例とも死因の検証のための剖検は望まれませんでした。
術前検査をしても全てを予測できるわけではないのが実情です。
誠にお気の毒なことと思います。ご冥福をお祈り申し上げます。
2024/06/29 00:06 参考になった! 2
投稿者 ソアちゃん さん からの返答
井上先生
この度はご丁寧なご回答、本当にありがとうございました。
現在、民事調停手続きしており平均的な獣医療であったのかを確認の為、多くの先生方から見解を頂戴しております。
平均的なレベルに達していない場合は、善管注意義務違反として賠償責任を問うことが出来そうです。やはり今回の犬の意識レベルで飼い主に返すことは普通ではなかった事を証明できると確信出来ました。
本サイト以外の先生方からの見解も全て同様でした。つまり麻酔からの復帰から飼い主に返すまでは平均的というよりも常識であるという心強い証明が出来そうです。
心より感謝申し上げます。
2024/06/29 09:21
再び 井上 平太 先生 からの回答
私の説明はあくまでも一般論というより当院での方法と感想です。事実関係を知らない獣医師には確定的なことは申せません。
今後とても重要なことは、麻酔方法・麻酔薬の話になります。
麻酔の方法により麻酔からの覚醒のスピードは異なってきます。起こりえる副作用も異なります。
ただここで言えるのは最新の麻酔薬を使用した方法が必ずしも良いとは言えないことです。その獣医師が使い慣れていて副作用を熟知していればむしろ従来の方法の方がその動物病院にとって安全性が高いといえます。どちらにせよ麻酔方法・麻酔薬の種類・麻酔前投薬・抗生物質も記録を保持しておいた方が良いでしょう。
次にもともと何か疾患を持っていなかったかどうかも重要になります。
術前検査を実施しているのかしないのか、術前検査の説明のプリントがあり読んだ上で飼い主が希望しなかったのか。麻酔の承諾書も読み返し、紛失しないようにしましょう
例えば肝門脈シャントなどがあり肝疾患があれば麻酔覚醒が遅延します。
日帰り手術の場合それを必ず実施するのか患者の状況により柔軟に対応するのか、そもそも飼主の希望で当日退院を決定されたのか・・・
麻酔以外の問題で死亡することもございます。例えば止血剤のトラネキサム酸は嘔吐を起こすだけでなく1%未満ではありますが痙攣をおこして死亡を起こすことがございます。ペニシリン系の抗生物質は強いショックを起こすことがございます。これらですと不可抗力といえます。
今の状況でこれらの事実を掌握する努力は辛いかもしれませんが、よく考えたうえでご判断ください。あまりにも辛ければその時間を愛するペットの霊位と向き合う時間にするのも一つです。その時間を奪われるのもつらいことだと思います。
最終的には飼い主の方が判断することですので事実を何も知らない部外者が提案できることではありません。ゆっくりと考えてご検討ください。
2024/06/30 22:11
投稿者 ソアちゃん さん からの返答
再度、ご丁寧なアドバイス恐縮でございます。
こちらからの内容証明に普通書留で手術の内容が記されておりました。
当方では獣医学の知識が無いためここに関しては何も反論できませんが
以下の内容でした。
血液検査
ALP 92U/L(20~150) ALT 35U/L (10~118) BUN 15mg/dl(7~25)
CRE 1.0mg/dl(0.3~1.4) GUL 88mg/dl (60~110) TP 7.3g/dl (5.8~8.2)
13:23 鎮痛鎮静剤 ドルベネ 注0.6ml 筋肉注射
13:38 全身麻酔ケタラール 2..3ml 筋肉注射
13:45 切開部位の剃毛、アルコール、希ヨードチンキによる皮膚の消毒、滅菌布を装着
14:00 手術開始 左精巣摘出 (3/0モノセンシで血管縫合) 右側 左同様 腹膜縫合(4/0モノセンシ リバース縫合) 皮膚縫合(3/0皮膚縫合糸
14:30手術終了 抗生物質 ビクタス5%注 1.0ml 皮下注射 アチパメ注 0.6ml筋肉注射
14:38 覚醒 術後経過14:55 横臥状態でわずかに流延がありましたが、心拍、呼吸に異常認めず。
15:00~16:00 2度術後状態を望診にて確認。 16:40分 退院
この時点で私が引き取りましたが、先に申しましたように、まだ麻酔から覚めず、立ち上がることは出来ませんでした。朦朧として脚は冷たく瞳孔は開いておりました。この後会計を済ませ、車で5分ほど走ったあたりで異変に気付きましたが、実際はもっと早く心肺停止したものと思われます。
2024/07/01 21:59
投稿者 ソアちゃん さん からの返答
追記ですが、麻酔のリスク等の説明や承諾書は有りませんでした。
手術の手順については詳しく説明がありました。
動物用マルチロータⅠ 術前術後モニタパネルでALP ALT BUN CRE GUL TPの
6項目を検査と記載されておりました。
2024/07/01 22:09
再び 井上 平太 先生 からの回答
確かに血液検査データに異常あありません。
麻酔薬の量は柴犬の一般的な体重を考えて問題ありません。
アチパメという覚醒促進剤を注射していれば、体調に問題なければその二時間後の退院は通常は可能と考えられます。
可能であることと、そこで退院させるかどうかは獣医師の判断(裁量)になります。
14:38の記述はあくまでも五感の印象ですので拝見していない者には推察できません。
術前検査の判断・麻酔法・麻酔薬量において、記載の中に獣医療上の過誤は無いものと思われます。
私はアンチセダンというアチパメと同じ成分の注射で過度の流延と痙攣をおこさせてしまった経験がございますが、一過性でした。
アトロピンの注射で流延は抑えられますがドルベネの麻酔前投薬としてアトロピンは推奨されておりません。
農水省の副作用情報では数例の死亡例がございますが他の薬剤と比べて特に多い印象ではございません。
2024/07/01 23:44
投稿者 ソアちゃん さん からの返答
井上先生
大変詳細なアドバイスに心より感謝申し上げます。
この度はお忙しい中、ご親切、ご丁寧なご回答を頂きありがとうございました。
こんな丁寧な先生がいらっしゃる地域の飼い主さん達が羨ましい限りです。
また機会がありましたら是非相談させて頂きたいです。
2024/07/02 12:14
去勢手術後の引き渡しタイミングについて
つい先日、1歳になったばかりの柴犬の去勢手術を行いましたが、麻酔から覚める事なく亡くなってしまいました。
引き取り時に犬はまだ朦朧としていて生きておりましたが、瞳孔が開いて、脚は冷たく、頬は大量のよだれを拭き取った跡のように濡れていました。
(その時は、麻酔のせいかと思いました)
会計を済ませ車で5分程走ったあたりで犬が動かない事に気付き、すぐに病院へ引き返しましたが、獣医師は犬を診るよりも早く、舌を巻き込んだのだろう? と言いました。この発言は、予測出来なければ出て来ないと思い疑念を抱きました。
獣医師からは、麻酔から覚めた後の傷の対処や、濡らしたりしないように説明は受けましたが、麻酔から覚めるまでの説明が有りませんでした。
一般的に、去勢手術後の引き渡しタイミング(犬の状態)をお教え願えませんでしょうか?
私が思うには、説明義務違反、経過観察義務違反では無いかと思うのですが...