大村 知之 先生からの回答
ALFちゃんは,ゴールデンレトリバーの8歳齢と言うことですので,少しずつ老年の仲間入りですし,腫瘍の発生確率も高くなってきます.まずしこりが何でありかによって重要性は変わってきますが,外観,発生場所,犬種,そして,針生検などの検査によって,炎症,過形成,腫瘍のどのグループの可能性が高いかを考えます.また,腫瘍によっては良性か悪性化が解る事もあります.
針生検の良い所は,簡単で時間がかからず,比較的費用も安い(病理組織検査と比べて)事ですが,検査の限界があります.上記の三つのグループ分けすらできない事もありますし,腫瘍の回りの炎症にしか針が入らずに,腫瘍を炎症を誤診してしまう可能性もわずかにあります.そのため,診断には十分な注意と臨床医(動物病院の獣医師)と病理医(顕微鏡検査を行ってくれる獣医師)のディスカッションが必要な場合もあります.針生検は,細胞診と呼ばれ,1つ1つバラバラの細胞を見て病気を判断します.これに対し,病理組織検査とは手術後に行う検査で,1つ1つの細胞を見るだけでなく,細胞の並び方を見るとができます(そのため術後は必ず必要です).したがって,針生検はすべてを知ることはできない限界のある検査ですが,このことを理解した上で行えばはじめの検査としては有用な検査だと考えられます.
では,危険性はないのでしょうか?かかりつけの先生のおっしゃるように,まれではありますが針をさした穴へ細胞をばら撒いてしまう可能性のある腫瘍もあります.しかし,そのような増殖の活発な腫瘍ならなおさら早めの手術が必要ですし,手術の時に針をさした皮膚ごと摘出すれば問題はありません.また,肥満細胞腫(決し太っている腫瘍ではありません)などは,いじる事によって細胞を刺激してヒスタミンと言う物質を放出し,腫瘍の周囲や消化器に炎症を起こしたり,最悪ショックを起こす可能性も否定できません.そのため,針生検は注意深い操作とその後の正確で迅速な評価が必要です.おそらくかかりつけの先生は,最良の場合と最悪の場合の両方を考えてお話になったものと考えられます.よく相談され飼い主さんがALFちゃんにとって何がベストかを考えてあげてください.
2006/10/04 20:06 参考になった! 0
投稿者 はこ さん からの返答
丁寧なご回答ありがとうございました。
大村先生のお言葉でかかりつけの先生のおっしゃってることの真の意味が少しわかった気がします。
もう一度かかりつけの先生に相談してみます。
ありがとうございました。
2006/10/11 08:06
針生検について
はじめまして。
教えていただきたいことがあります。
10日ほど前にゴールデンレトリバー9歳の左前足にしこりをみつけました。
数日前に病院で見てもらったところ、腫瘍だと思われる、とのこと。
良性か悪性かは検査をしないとわからないから
もう少し様子を見て、大きくなるようだったら調べましょう、と
いわれました。
病院から帰ってきてNETでいろいろ調べましたが、
もし悪性腫瘍であれば早く取るべきという意見を多く見かけました。
また、針生検で細胞を調べることが有効のようですが、
かかりつけの先生に針で腫瘍をつつくことで
転移につながる可能性があるから勧めない、といわれました。
セカンドオピニオンを求めることも可能ですが、
他の病院に行ったら針生検することになると思われます。
そこで針生検に危険性がないのかどうか教えて欲しいです。
よろしくお願いします。