栗尾雄三 先生からの回答
獣医師の栗尾と申します。
まず質問事項に回答してまいります。
・本犬への負担を最小限にして何かできることはないものでしょうか?
→ これは本当によくある質問です。とりあえず楽にしてあげたい、痛みをとってあげたい、苦しむのは可哀想などですが、当然、そういうことを考えて診察行為をしています。負担を最小限にするために診察をしています。苦しめるためではありません。最善のものを提示するようにしているはずです。もし、通院のストレスが可哀想であれば、通院をやめるのはひとつの手段だとは思います。そこは飼い主様の判断となります。
・抗がん剤は無理にしても、確定診断もなしには血栓溶解剤を飲ませるというのは無謀なものでしょうか?
→ 無謀というわけではありませんが、安全な薬かというとそういうわけではありません。それなりに根拠が必要となります。ただ、体重が重く、ALPが高値であれば根拠としては十分かもしれません。
※血栓か腫瘍かを悩むというのはあまりよくわかりません。区別はできそうなものです。血栓であれば血管内にでき、腫瘍であれば血管外に発生することが一般的なように思えます。
・ほかに血栓を診断できる検査というのはないのでしょうか?
→ これは無いという表現が正しいかどうか悩みます。なぜなら、超音波検査が最大の検査であるからです。CT検査でも評価は困難な気がします。血管内の評価で超音波検査を上回るものはないように思えます。
レントゲンの写真を拝見いたしました。
心陰影の拡大はありそうですが、腫瘍?というのがよくわかりません。比較的キレイなレントゲンかと思います。
あとはクッシングの検査はしておいたらいいのではと思うのですが、体質的に治療はできないというのがよく意味がわかりません。血栓を溶かす治療を始めるための根拠として検査をしておきたいということみたいですが、血液が乳び液になっていたら、血栓治療はしても問題ないように思えます。(獣医師により意見が分かれそうですが。)
最後になりますが、大変な高齢犬であり、病気を多数抱えることは仕方ありません。弱っていったり、元気がなくなっていくのもどうしようもない部分があります。その点はご理解ください。
どうぞよろしくお願いいたします。
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konomi動物病院 獣医師 栗尾雄三
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2021/07/15 16:20 参考になった! 0
投稿者 ハニャコ さん からの返答
栗尾先生
お忙しいところ早速のご返答ありがとうございます。また丁寧にご教授くださいまして心より感謝申し上げます。
差支えなければあともう少しご意見をお聞かせください。
腫瘍か血栓かについて。
実は初めにエコーで診ていただいたのは若い担当医で、心基底部にマスがあるようだが自分ではよくわからないので循環器認定医の先生がおられる日に改めて来てほしいといわれて3日後に再診したのでした。
残念ながらエコー検査室へ私は入れず、循環器に精通した先生とも直接お話しは全くできなかったのですが、その先生の方が血栓かなぁと仰られたようなのです。しかし担当の若い先生はご納得がいかないような感じで、どちらかというと腫瘍を疑っておられるニュアンスでした。
太っているうえに抵抗が激しいため、画像が見えづらいということはあるのでしょうか?
CTに関しては、造影剤が入っていけば腫瘍、入らなければ血栓であると判断できるとのお話でした(逆だったかも?)。私が拒絶しなければCT検査により前向きなご様子でした。腎臓も心臓も悪いのに大丈夫なのか?疑問を感じました。
自分で調べてみたところ、血栓症の診断に血液中のDダイマーを測定する方法があるとの記述を見つけたのですが、これは獣医界ではあまり一般的ではないのでしょうか?
クッシングの治療に関しては、なぜできないのか聞いてみようと思います。(腎臓が悪いと無理なのかと思ってしまいました)また、血栓治療開始の根拠についてももう一度、獣医さんと話し合ってみたいと思います。アドバイスありがとうございます。
栗尾先生の仰る通り、もう16歳ですし、これまで健康に暮らせたことに感謝して残り少ない犬生を1日でも充実したものにした方がよいですよね。
この子の父犬が心臓病とつきあいながらも18歳を超えて、枯れるように穏やかに逝ったのを見て、ついつい同じような最期を夢見てしまいました。母犬や他同胎兄弟が短命だったから覚悟はしていたのに、うっかり欲が出てしまっておりました。
先生のお言葉で、我に返ることができましたこと、重ねて御礼申し上げます。
どうぞよろしくお願いいたします。
2021/07/16 16:37
再び 栗尾雄三 先生 からの回答
ご連絡ありがとうございます。
太っていると超音波画像がみえづらいということはよくあります。特に心臓は動くので、余計に見えにくいという傾向があります。少しでも血栓にみえるのであれば少量でもよいので投薬治療はしていくべきかもしれません。
造影剤が入らなければ血栓というのはわかりますが、造影剤が入っていけば腫瘍と断定することは極めて厳しいかと思います。おそらく造影剤が十分に入るほどのサイズではないと思います。想像ですが、0.5~1cm程度のサイズではないでしょうか。あまり造影剤が鮮明にうつるようなサイズではありません。なお、1cmを超えるような血栓はあまり考えられません。仮に2cm以上であれば腫瘍と断定してもよさそうです。
Dダイマーを使用することはあります。ただ、それは全身の血栓症を疑う場合であり、局所的な血栓に関して、画像でみえているのであれば、超音波でみていただいた方が確実です。具体的に申し上げると、、、
・Dダイマー 低値 → 血栓の存在は否定できず、局所的な問題なので数値が正常と出ている可能性がある
・Dダイマー 高値 → 心基底部のものは血栓であるとは断定できない、なぜなら、他の部位に血栓が存在しているかもしれないから
ということで、Dダイマーというのはあくまで画像でみつかっていない段階で有用な検査という感じになります。すでに画像でみつかっていれば、それで十分なはずです。
どうぞよろしくお願いいたします。
2021/07/16 17:16
投稿者 ハニャコ さん からの返答
栗尾先生
早々にお返事いただき本当にありがとうございます。
なるほど、とてもわかりやすいご説明で、よく理解できました。
獣医さんにサイズを聞いたとき、4㎝くらい・・・かな?と、あやふやな回答でしたのですが、もしそうだとするとやはり腫瘍の可能性が濃厚な気がしてきました。それであれば血を溶かす薬は危険ですね。
大変申し訳ありませんが、甘えついでに最後にもう3点だけ教えてくださいますか。
2年前からこれまでアピナック25mgを1日1錠、服用しており、今後も引き続きそのままの継続でよいとされているのですが、咳はほとんどないものの、この3か月ほどで心臓のドキドキや食後のパンティングが日に日に激しくなってきているのがとても不安です。肺動脈の影響もあるのでしょうが、今後、さらに強い心臓の薬に変えるのは一般的にはどういった状態、段階になるのでしょうか?
また、先のレントゲン画像の気管の状態については先生はどのように評価されますでしょうか。いわゆる気管虚脱によって呼吸に難が生じていると考えられますでしょうか?
3つめの質問は、利尿剤についてです。2年前に最初に弁膜症の診断を受けたのは別の病院で、その際、利尿剤(スピロノラクトン25)を一緒に処方されて1年半、毎日飲み続けました。それが腎臓を悪くした原因のひとつであることは考えられますか?
本当に何度も申し訳ございませんが、どうかよろしくお願いいたします。
2021/07/16 22:33
再び 栗尾雄三 先生 からの回答
ご連絡ありがとうございます。
4cmというと血栓の可能性はまずあり得ません。そもそもそんな太い血管は犬にはないと言えます。なので腫瘍性疾患の可能性が高そうです。心基底部腫瘍は別名ケモデクトーマともいわれます。治療は主に分子標的薬(抗癌剤の一種)となります。
アピナックは心臓の薬と考えられていますが、あまり私はそのように捉えていません。心臓の薬についてはステージ分類により増量する可能性、あとは発咳の頻度で検討していきます。
気管虚脱については非常に軽度のものなので、ほとんど症状は無い程度に思えます。朝の寝起き時にちょっと咳が出るかもなくらいです。
利尿剤の飲み続けて腎臓を悪くした可能性はないとはいえませんが、実際にあまりそういうことはありません。それよりも年齢的な要素の方がはるかに大きいように思えます。BUNが25であれば、年相応というか、全然悪くないと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
2021/07/16 23:11
投稿者 ハニャコ さん からの返答
栗尾先生
夜分にも関わらずお返事くださいまして感激です。
頭の中の様々なモヤモヤがすっきりしました。
このように文章で詳しく説明していただけると、素人には本当にありがたいです。専門用語もひとつづつ調べることができて納得もしやすくなりますし、主治医以外の知識と経験豊富な獣医さんのご見解をお聞きできてよかったです。
おかげ様で、愛犬に残されたわずかな時間を慈しみながら生活していく、改めて覚悟が整いました。今後は極力安静に、今のうちに好きなものを食べさせ、犬が毎日を安心して暮らせる努力をしていきます。
貴重なお時間を割いていただき、本当にありがとうございました。
2021/07/17 00:21
再び 栗尾雄三 先生 からの回答
ご連絡ありがとうございました。
少しでも参考になりましたでしょうか。
お手数ですが、以下より評価をいただけますとうれしく思います。
■評価をお願いいたします
https://search.google.com/local/writereview?placeid=ChIJA1BzT_-fWjUR3MNwV2hR9S0
https://pet.caloo.jp/hospitals/detail/340232
https://loco.yahoo.co.jp/place/g-zda9kPeBFwA/review/
2021/07/17 10:12
肺動脈における血栓あるいはマス病変
はじめまして。今週16歳になるビーグル雌のことでご相談させてください。
ちょうど2年前に心雑音を指摘されエコー検査で僧帽弁閉鎖不全ステージB2と診断。(LA/AO 1.51)アピナックを飲み始めて現在に至ります。
他に胆嚢粘液嚢腫あり、腎臓機能の低下、程度は軽いが気管虚脱気味。今はアピナック、ウルソ、スパカールを服用しています。ALPオーバーは5年前からで一時期3000を超えていましたが(47~254)薬を増やしたりダイエット?で現在は少し下がりました。
診断時より定期的にエコーやレントゲン検査を受けていましたが、今月になって右肺動脈のところにマス病変か、あるいは血栓らしきものがあるので突然死を覚悟しなければならないといわれました。
長いところで4cm位とか。血栓か腫瘍か、どちらかによって治療は全く異なるものになるので確定させるにはCT検査が有効だが、心機能の心配がある。とりあえず簡単なところで肺血栓をよく引き起こすとされるクッシングのホルモン検査をしてみてはどうかと勧められました。体質的に?クッシングの治療はできないが、血栓を溶かす治療は始められるからというのですが、、、、。
エコー検査では副腎の腫大はありませんでした。本犬は体重17キロと太っていてぽっこりお腹、散歩を嫌がり(カートで連れ出すと帰りたくて速足でよく歩きますが)、最近は特に食後のパンティングが激しく、また室内で少し動くだけで呼吸が乱れるような状態ですが、一時期気になっていた多飲多尿はおさまっていますし、脱毛もありません。
食欲も、えり好みが昔より激しくなったせいもあり飼い主としては以前よりも低下しているという印象があります。(好物への食欲は旺盛です)朝はテンション低く動きが鈍いですが、夕方以降は大変元気です。
とても混みあう病院で犬にストレスを与え、時間と手間をかけて検査したとしても結局はグレーな結果になるのではないか?わざわざ検査する意味があるのだろうか、それなら最初から血栓を溶解する薬を、とお話ししたのですがだめだそうです。
近頃は病院を大変怖がり診察も大変、車で向かう道中のパンティングもひどく苦しそうで心配になります。なるべく通院や検査は避けたく、かえってCT検査の方が本犬にとっては楽なのかな、と考えたりもしますが、たとえ腫瘍とわかったところで適切な薬剤を選定することが可能なのか?抗がん剤で食欲が減退して辛い思いをさせるのでは?など、考えがまとまらず堂々巡りを繰り返しています。
何もせずに自然に任せようという気持ちが半分以上なのですが、呼吸困難で苦しい思いをさせて最期を迎えるかもしれないと思うと恐ろしく。今、本犬への負担を最小限にして何かできることはないものでしょうか。抗がん剤は無理にしても、確定診断もなしには血栓溶解剤を飲ませるというのは無謀なものでしょうか?あるいはほかに血栓を診断できる検査というのはないのでしょうか? 平時の呼吸は落ち着いていて、検査の結果でも心肺機能は維持できているそうです。勉強不足で知識も足りないため自分でも考えを整理できず、とりとめもない文章になってしまい恐縮ですが、何卒ご意見、アドバイスを賜りたく、お願い申し上げます。
TCHO 293mg/dl
Ca 12.5
IP 4.8
ALT 133
LIP 48
K 4.7
GGT 4
ALP 336(正常値89以下)
SDMA 20
CREA 1.8
BUN 25
ハニャコさん からの補足説明
上記BUNの数値が間違っておりました
正しくは45です
2021/07/20 15:07